プロローグ


  …血の匂いがする。
   周りには、命という何かが欠けた人間達の山。
  「それ」に囲まれながら、少女は空腹に耐えて、息をする。
 どうしてこうなってしまったのだろうか。

 …ああ。戦争という名の欲望のせいだ。
 国民全員が望んだわけじゃない。
 …じゃあ、誰のせい?
 多くの命が失われる事は分かりきっていたはずなのに。
 命の価値と誰かの自尊心を天秤にかけて、
 身勝手な自尊心が勝って…

 平和が恋しい。喉から手が出るほどほしい。
 屍の山なんてもう2度とつくりたくない。
 囲まれたくもない。
 
 生きる気力すらないたった15歳の少女は、ゆっくりと目を瞑り、呼吸をするのをやめた。

 薄れる意識の中で、どうか、一度だけで良いからチャンスを
 ください…と願った。




 誰かの思う「平和」は自分の思う「平和」とは違うかもしれない。
 ーそれでも一緒に認め合って生きることができるなら…
 仲間を信用できるなら…
 屍の山はもう2度とできる事はないだろう。

  心と命、そして平和の価値が試される、究極のデスゲームが
 始まろうとしていた。