〜魔王様、もう嫌になる〜

「お目覚めになりましたか!魔王様。」

起きたら目の前にすごい美少女メイドがいる。

「なにがあったんだ!」

「魔王様が勇者に倒されてしまい。眠りにつかれました。」

そうか、そういや勇者に倒されたんだっけか。

「アリス...だったか。」

俺の記憶が衰退していなければ、たしかうちのメイドのアリスのはずだ。

「さようでございます、メイド長のアリスでございます。記憶の衰退がないようでなによりです。」

よかった。ちゃんと覚えている。あとはスキルなどの能力が衰えてないかだな。
早速確認をーー

グ~~   おなかが鳴った...

やばい超恥ずかしい。ぎこちない動きでアリスを見る。...めっちゃ見てる。

「そうですよね。寝ている間何も食べていませんでしたから、お腹が空きましたよね!すぐに準備いたします!」

笑顔でそんなことを言いながらアリスがダッシュで部屋を出ていった。
やばい、もう一度眠りたい...
そんなことを考えていたらすぐに食事ができたようだ。
さすがうちのメイド。美少女でご飯もおいしい。
しばらく、食事をして思い出した。
これじゃ前と全く変わらないじゃないか!
そうだ、俺はもう何回も勇者に倒されては眠り、また倒されては眠りを繰り返している。
魔王は勇者にいずれ負ける。それがこの世界のルールなんだ。俺の運命なんだ
もう嫌だ。もう頑張って作ったダンジョンや城を壊されたくない。結構気に入ってた部下を失いたくない。頑張って貯めた貯金を奪われたくない。
なので...

「俺、魔王なんてもうやめる。」

「「「え!」」」

「魔王様!!何を言っているのですか!」

「だってもう嫌だもん。勇者強いし、怖いじゃん。」

「だ、だってと言われましても...魔王様あなたはっ」

「俺はもう魔王じゃない今日から俺の名は...」

そういえば俺、名前あったっけ。魔王としてこの世界の生まれ、ずっと「魔王」と呼ばれてきたから名前がない
じゃあ作ればいい。俺の名前は...

「ラルクス...俺の名前はラルクスだ!」

「で、ですが魔王様っ...魔王様!まおうさまー!...ラルクス様!」

「ん?なんだ!」

「はぁ...ラルクス様。この世界には魔王という存在が必要不可欠です。せめて名乗らなくても、魔王という肩書は持っていてください。」

「わかった。そうしよう。」

こうして俺は魔王なんかやめて、ラルクスというただの人間(笑)になれた。
よし、魔王じゃなくなったことだし!街にでも行ってみるか!
とその前に忘れていた、ここの屋敷じゃないとできないことを!
そう、ステータスやスキルなどの確認だ。実際にやってみないとわからないこともあるしな。
んじゃステータスサークルで確認するか。
ステータスサークルは、中に入ると周りから見えないよう個室のようになり自分のステータスが確認できる魔道具だ。結構便利。
んー下がってるというよりちょっとだけ上がってねえか!これ。通常、永い眠りについた後は能力が下がるだけなはず。
だが見る限り上がっているのは前カンストしていた魔法攻撃力のみ。
おそらく、ステータスが上がったというよりは上限が解放されたというのが正しいだろう。
なら他のステータスの上限も解放されているということか。
ステータスは全部で7種類あると言われている。魔力・魔法攻撃・物理攻撃・魔法防御・物理防御・スピード・弱点属性耐性
ちなみに俺の一番低いステータスは弱点属性耐性だ。そして弱点は光属性。このせいで勇者に負けたといってもいい。
俺はこのステータスをずっと恨んでいる。
ステータスの確認が終わったらスキルの確認だ。
すべてのスキルを試すなんて非効率的なことはしたくない。こんな時は初級魔法のファイアボムを投げてみる。
当然、普通の人間がやればちょっとボンッってなり終わるのだが...

「ファイアボムっと...そいっ」

ズドォオオオオン
やべ...久しぶりすぎて加減わすれてた。
上限を超えた魔法攻撃力のおかげもあってか、山が消えてクレーターができた。
一応結界があるため屋敷やその広大な敷地外には少しの影響もない。
だが加減を忘れたのは重大なミスだった

「まおっ...ラルクス様...」

まずい、アリスの声だ。後ろから赤黒い魔力を感じる。

「いい加減にしてくださあああああああい!!」

「ごめんなさああああああああああああい!!」

盛大に説教された。メイドに...
メイドに説教されるのは主人としてどうなのだろうか...
説教されているときにいろいろ考えていたんだが、街には冒険者ギルドやらというものがあると聞いたことがある。
なので俺は、冒険者...というものになってみようと思う。
さっそく町に行こうということで、

「アリス―ちょっといいか!」

「どうされましたか!ラルクス様。」

「街に行く、ついてきてくれ。」

「街に!?ですか!!ですが私もご一緒してもってああ待ってくださいラルクス様!!」
早く行きたいので話をさえぎって転移魔法の準備を始めた。