優善一宅

去年の夏、土砂崩れで僕の親戚は居なくなった。

3年前、産んでくれた親は大洪水で流された。

僕は幸運なのか、不運なのか、生き延びている。

50年くらい前からとても自然災害が多くなった。
そしてその災害でたくさんの人が亡くなっている。
その事で僕のように親がいない子供も少なくない。

そういう未成年の子供が多くなったことで
団地のような場所を身寄りのない子供たちに提供することが増えた。その1つが僕が暮らしている団地、名前は〈優善一宅(ゆうぜんいったく)〉一部屋6人組で暮らしている。

僕の部屋では、
僕虎雅16歳、13歳の真司、11歳の彩晴、7歳の翔馬、4歳の優太の5人で今は暮らしている。

僕よりも年齢が若くて、身寄りのない子もいる。
そういう子が毎月のように入居してくる。
新しい子が入るたびに悲しい気持ちになる。
それでも僕は何もする術がない。それが胸を締め付ける。

ここでは、年齢が高いものがだいたい部屋のリーダーになる。
食事、洗濯、掃除など年齢を考慮して分担してやる。

僕は主に水、金、土の夜ご飯、お風呂掃除、国から貰ったお金の管理をしている。
高校になってからは、本屋でアルバイトしている。

高校までは国が無償で学校に通わせてくれるのだが
大学は自費だ。

僕は大学まで進んで災害について学びたいと思っているので学費を稼がないといけない。

今日は、週3で入っているバイトの日。
学校から15分くらいの場所にあるので
学校の生徒がよく来る。

この本屋では買取をやっていて、
新刊も中古もあり、たくさんの本がここの店にはやって来る。

タイムカードを押しカウンターに入ると
先輩が今日来た古本の仕分けをしていた。

虎雅「おはようございます。僕も手伝います。」

先輩「おはよう。ありがとな。今日とんでもない量が
来ていて1人じゃ終わらないわ。」

先輩の足元には15個くらいの段ボールが置いてあった。

虎雅「流石にこの量はきついですね。」

まとめて持って来る人はいるが僕が働いてからこれほどの量は初めてだ。
ジャンルがバラバラなのでとりあえず仕分ける所から始める。

レジと仕分けをしながら過ごしていると
気になる本を発見。

〔自然災害と妖〕

自然災害についての本はこれまでたくさん読んできたが、この本は見たことない。
科学的なものは読んできたけれど、おとぎ話系は読んだことがないのでなんだか興味が湧いた。

虎雅「先輩、この本僕が買ってもいいですか?」

先輩「いいよ。裏に置いておいて帰る時レジ通しな。」

虎雅「ありがとうございます。」

しばらくして、22時前になったので上がらせてもらう。
本の精算を済ませ、家に帰る。

自転車で20分くらいで家に着く。

家に着くと彩晴、翔馬、優太は寝ていて、
真司は勉強をしている。
僕がバイトを始めてから真司がみんなのことを見てくれている。
本当にありがたい。

真司は半年前にあった北塔島大地震の生き残りだ。
北塔島は地震のせいで建物は全て全壊、たまたま高台の山にいた真司と数人の島人しか生き残りはいなかった。
真司は毎日の日課で山の頂上までランニングをしていたときに地震が来たそうだ。
大地震と共に津波も来て島が半分も海に沈んでしまった。もう住める場所は無くなってしまったらしい。
真司はその大地震と津波で友人も両親も失った。

来たばかりの真司は生気が感じられない顔をしていたが、今は災害で悲しむ人を少なくできるように、災害救済特別区という自衛隊に近しい民間の団体に入るために必死で勉強、体を鍛えている。

そんな真司を見ていると僕も頑張ろうと思える。
力を与えてくれる存在はとても貴重だ。
どんなに知識を得てもなにか具現化させないと意味がない。
僕は今は何も出来ていないからとても生き苦しい。
だから頑張っている真司をみるとやらなきゃと思って勉強を頑張れる。

虎雅「ただいま。」

真司「お帰り。今日はアジの開きだよ。」

虎雅「お!作ってくれてありがとう。」

風呂に入り、夕食を食べる。
真司は来た当初、作った干物は焦げ焦げになっていたが今はふっくらと焼き上げている。
みんな1日1日成長しているんだなと感じる。

虎雅「ご馳走さま。やり過ぎも体に毒だからしっかり休めるときに休めよ。」

真司「うん、もうちょっとやったら終わる。」

虎雅「じゃあ先に寝るね。おやすみ。」

「おやすみ。」

僕は自分の部屋に入り寝る準備をする。
今日は眠気が強いから明日買った本読もう。

アラームを5:30にかけ眠りについた。