危険なお茶会

……
 いらっしゃい! 私はアリス! よろしくね!
 此処はどこかって? 勿論、不思議の国に決まってるじゃない!
 あなたは誰かって? 貴方はお客様。それ以上でもそれ以下でもないわ。
 さあお茶会へ向かいましょう? 皆、待っているわ!

 お茶会に着いたわ! あれ? 皆、慌ててどうしたの? 三日月ウサギ、説明してくれる?
「ああ、アリス、どうか聞いておくれよマッドハッターが死んでしまったんだ」
 嘘でしょ!? マッドハッターが!? 私はマッドハッターに駆け寄ったわ。彼はテーブルに伏していたわ。顔は横を向いて口から血を流していてね。分かりやすく死んでいたわ。
「アリス、それは血じゃなくて紅茶だよ」
 あらそうなの三日月ウサギ、それは失礼したわ。しかし犯人は誰なのかしら。
「そんなの決まってる、赤の女王さ」
 塀の上にハンプティダンプティがそんな事を言うわ。でも赤の女王はここにはいないわ? どういう事でしょう。
 三日月ウサギが手に持った魚をぐるぐると振り回しながら。
「それより、その男は誰だい? アリス」
「お客様よ、何年ぶりかしら」
 そこでお客様が口を開いたわ。
「その……三日月ウサギってやつが持っているのはフグじゃないのか?」
 フグ? それは何かしら?
「毒を持った魚……だったはず」
 毒! それは怖いわ! 三日月ウサギ、どういう事?
「さあね、俺は拾っただけだ」
 三日月ウサギは鼻歌を歌っているわ。
 お客様は混乱しているみたい。
 どうしようかしら。このままじゃお茶会が開けない。
 毒を持った魚なんて持ってどうしようと言うの?
「さあね、俺は知らんさ」
 うーむ、これは強敵だわ。全く隙がない。
「いや、明らかにお前が犯人だろう!」
 お客様が叫んだわ。怖いわ。確かに毒を持った魚は怖いけど。三日月ウサギを怒る事ないのに。
「何を言うんだ。ハンプティダンプティは赤の女王が犯人だと言っていたぜ? きっと兵士にやらせたんだ」
「……」
 お客様は黙り込んでしまったわ。呆れたように。一体、彼の心に何が起きたのかしら。
 ハンプティダンプティはいつの間にか塀から落ちて割れていたわ。
 お客様はそれに驚き、腰を抜かしていたわ。
「犯人捜しなんてもう止めにしようじゃないか、お客様」
 弱みを見せたお客様に、グイっと迫る三日月ウサギ。
 後ろに下がるお客様。私はその様子を眺めていたわ。
 それじゃ、三日月ウサギ! その魚を食べてみて! それで安全だって証明されるでしょう!
「え!?」
 目を見開いて驚く三日月ウサギ、しかしその提案を断る事は出来ないわ。私が今回のお茶会のオーナーだから!
 お客様は私を怪訝な目で見たわ。失礼しちゃう。
「分かったよ、じゃあなアリス」
 魚をペロリとたいらげる三日月ウサギ、しばらくした後、顔を青くして倒れたわ。横に居るマッドハッターと同じようにね。
 これで犯人が分かったわねお客様! さあお茶会を始めましょう!
 そう言うとお客様は逃げ出したわ。何故かしら?
 急いで追いかけなくちゃ。不思議の国に来た時に案内人のウサギを追いかけた事を思い出してワクワクしちゃう!