37話 クウド商業連合国

煌びやかな明かりが輝くクウド商業連合国に入ったのは、深夜も回り空が白んできたころだった。
だが、人々は街を行き交い忙しそうにしている。
「凄いところですね」
ガラン王都と比べ雑多な印象の街並みを眺めながらリオンが呟く。
巨大な建物が立ち並び、そのどれもが煌々と光を放っている。
ガランよりも発展しているように思えるがそのどれもが歪に見える。
周りとの調和を考えず、個別に成長しているような感覚を覚えた。
しかし、街の人々はそんなことは気にせずにあちこちの建物を行ったり来たりしている。
恰好もクウドの方が派手なように思う。
街ごとの違いを感じながら、リオンが歩いていると

「邪魔だぁ!! どけぇ!」
「うわっ!?」

凄まじい爆音をかき鳴らしながら起動車《バイク》が、リオンをすれ違って抜き去っていった。
「リオン大丈夫か!?」
驚いて尻もちをついたリオンにエアリアが駆け寄る。
「すみません、ちょっとぼんやりしていて」
差し出された手を取りながら立ち上がり、汚れをはたく
「この街の連中にはガラの悪い奴が多いからな、気を付けた方がいい」
起動車《バイク》の走り去った方を睨みながら呟き、足を進める。
「どこへ行くんですか?」
「……あ、いや……クウドの元老院の一人に会おうとは思うんだが……」
どこか歯切れの悪い返事をするがそれも当然か
「……誰が信用できるか分からないんですか?」
そう、ミチターの街で聞いた魔族との内通を行っている者がいるという情報。
その内通者が誰なのか、リオンはもちろんエアリアにもそれが分からなかった。
その状態でトップと会うなど猛獣の群れに丸腰で突っ込んでいくようなものだった。
それが分かっているから、エアリアの足取りも普段より重いものになっている。
「ああ、だが情報を集めようにもな……」


苦い顔をしながら街灯の一点に目を向ける。
リオンもその視線の先を追った。
「ん? なんですあれ?」
そこにあったのは小さな水晶球だった。
より注意を向けるとほんのわずかに魔力の流れを感じる。
「元老院の連中がこの街を管理するための監視システムだ」
あまりジロジロ見るなよ、と付け加えエアリアは重い足を運ぶ。
元老院の誰に会えば安心なのか、それが分かればこの国での行動も大分変わってくるのだが。


「……ん?」
うっかり考え込んでしまったエアリアが辺りを見回すとリオンがいなかった。
(しまった……まさか敵か!?)
そんな心配をしたがそれはすぐに杞憂に終わった。
「おい! その娘嫌がっているじゃないか、やめろよ」
「あぁ? なんだてめぇ、無関係の奴は引っ込んでろ」
サングラスを掛けた数人の男たちと何やら言い争いをしていたのだ。
傍では原因となったであろう少女がオロオロしていた。

「……全く、何をやっているんだ……」
エアリアはため息をつきながら争いの中心に向かっていった。