声をかけてきたのは三十代くらいの男だった。
筋骨隆々な体を濃紺のスーツで包み込み、腰にはそのいで立ちには不釣り合いな大剣を下げていた。
その剣の柄に手を掛けながら二人を品定めするように視線を這わす。
「……貴様、自警団の者だな……」
エアリアも剣に手を掛け男を睨みつける。
だが、男はエアリアの鋭い眼光を受けても一切動じることなく薄く笑っている。
「剣呑なのは結構だが、ここで抜いたら貴女の国がまずいんじゃないのか?」
男はエアリアの質問には答えず、エアリアの素性から痛いところを突く。
彼女の立場的に他国で戦闘を行うのは問題があった。
「く……」
手を下ろし悔しそうに拳を握るエアリアを見て、リオンは杖を男に構える。
「あいにく、僕は何処の国とも無関係だ。 このままあんたを追い払うこともできるが?」
「はぁ……そうなんだよなぁ、お前だけはなんの情報も無いんだよなぁ」
大袈裟なため息を吐きながら、男は首を振る。
だが、それが形だけの物だというのは誰の目にも明らかだった。
人を喰ったような態度を崩さず、男は続ける。
「まぁ、でも不正入国なのは変わらないし拘束させてもらおうか」
片手を軽く上げると何処からか起動車《バイク》に乗った男たちが続々と集まってきた。
カレンを含む三人は、あっという間に取り囲まれてしまった。
「あ……あの、ウチは一体なんでこんなことに……」
訳が分からないとばかりに男へ質問をするカレンだったが、その返答は余計に彼女を混乱させるものだった。
「ん? ああ、不正入国者と取引した罪で君も拘束させてもらうよ。後、もうこの街で君は商売できないから」
「待て! この娘は関係ない!!」
リオンの言葉にも男は耳を貸そうともしない。
「ま、考え無しに人助けなんてするもんじゃないっていい教訓でしょ」
だが、押し黙ったままだったエアリアがそれを聞いて、ついに剣を抜いた。
「聞き捨てならないな、誰かを助けようとする思いをバカにするとは」
「ふ、いいのかい? ガランの騎士様がそんなことで剣を抜いて」
それに答えることなく魔力を込め、赤熱化した自身の得物で男を斬りつける。
「おいおい、随分と荒っぽいんだな」
同じように剣を赤熱化させ、エアリアの一撃を受け止め男はにやりと笑う。
にわかにざわつく周囲の部下たちを制しながら、エアリアと互角に渡り合う。
「この騎士様は俺が相手をする、お前たちはそこの二人を逃がすなよ」
「私を知りながらよそ見とは、随分な実力者だな」
皮肉を交えながらエアリアは男へと攻勢を強める。
だが、普段よりもその動きにはキレが無かった。
「く……」
「ふふ、あんたの剣術はもっと広い場所でこそ、その真価を発揮できるというもの」
そう、エアリアの剣は元々、起動車《バイク》と併せて使うために最適化されたもの。
このような狭い通りなどでは半分も実力を発揮できないのだ。
「くそっ、こいつらさえいなければ……」
助けに行こうにも、辺りを囲まれリオンは身動きが取れなくなっていた。
その上、隣にはこちらのせいで巻き込んでしまったカレンまでいる。
「あの、ウチのことは放っておいていいでスから……」
商売が出来ないと言われたのがよほどショックだったのか顔面蒼白のままカレンが言う。
もはや生きることすら諦めてしまっているようなその口振りにリオンは強い口調で拒否する。
「いやだね、そんな風に言われて、はいそうですかと頷く訳ないだろ!」
そのとき、リオンの元に何かが投げつけられた。
とっさに掴むと、それは起動車《バイク》のカギだった。
筋骨隆々な体を濃紺のスーツで包み込み、腰にはそのいで立ちには不釣り合いな大剣を下げていた。
その剣の柄に手を掛けながら二人を品定めするように視線を這わす。
「……貴様、自警団の者だな……」
エアリアも剣に手を掛け男を睨みつける。
だが、男はエアリアの鋭い眼光を受けても一切動じることなく薄く笑っている。
「剣呑なのは結構だが、ここで抜いたら貴女の国がまずいんじゃないのか?」
男はエアリアの質問には答えず、エアリアの素性から痛いところを突く。
彼女の立場的に他国で戦闘を行うのは問題があった。
「く……」
手を下ろし悔しそうに拳を握るエアリアを見て、リオンは杖を男に構える。
「あいにく、僕は何処の国とも無関係だ。 このままあんたを追い払うこともできるが?」
「はぁ……そうなんだよなぁ、お前だけはなんの情報も無いんだよなぁ」
大袈裟なため息を吐きながら、男は首を振る。
だが、それが形だけの物だというのは誰の目にも明らかだった。
人を喰ったような態度を崩さず、男は続ける。
「まぁ、でも不正入国なのは変わらないし拘束させてもらおうか」
片手を軽く上げると何処からか起動車《バイク》に乗った男たちが続々と集まってきた。
カレンを含む三人は、あっという間に取り囲まれてしまった。
「あ……あの、ウチは一体なんでこんなことに……」
訳が分からないとばかりに男へ質問をするカレンだったが、その返答は余計に彼女を混乱させるものだった。
「ん? ああ、不正入国者と取引した罪で君も拘束させてもらうよ。後、もうこの街で君は商売できないから」
「待て! この娘は関係ない!!」
リオンの言葉にも男は耳を貸そうともしない。
「ま、考え無しに人助けなんてするもんじゃないっていい教訓でしょ」
だが、押し黙ったままだったエアリアがそれを聞いて、ついに剣を抜いた。
「聞き捨てならないな、誰かを助けようとする思いをバカにするとは」
「ふ、いいのかい? ガランの騎士様がそんなことで剣を抜いて」
それに答えることなく魔力を込め、赤熱化した自身の得物で男を斬りつける。
「おいおい、随分と荒っぽいんだな」
同じように剣を赤熱化させ、エアリアの一撃を受け止め男はにやりと笑う。
にわかにざわつく周囲の部下たちを制しながら、エアリアと互角に渡り合う。
「この騎士様は俺が相手をする、お前たちはそこの二人を逃がすなよ」
「私を知りながらよそ見とは、随分な実力者だな」
皮肉を交えながらエアリアは男へと攻勢を強める。
だが、普段よりもその動きにはキレが無かった。
「く……」
「ふふ、あんたの剣術はもっと広い場所でこそ、その真価を発揮できるというもの」
そう、エアリアの剣は元々、起動車《バイク》と併せて使うために最適化されたもの。
このような狭い通りなどでは半分も実力を発揮できないのだ。
「くそっ、こいつらさえいなければ……」
助けに行こうにも、辺りを囲まれリオンは身動きが取れなくなっていた。
その上、隣にはこちらのせいで巻き込んでしまったカレンまでいる。
「あの、ウチのことは放っておいていいでスから……」
商売が出来ないと言われたのがよほどショックだったのか顔面蒼白のままカレンが言う。
もはや生きることすら諦めてしまっているようなその口振りにリオンは強い口調で拒否する。
「いやだね、そんな風に言われて、はいそうですかと頷く訳ないだろ!」
そのとき、リオンの元に何かが投げつけられた。
とっさに掴むと、それは起動車《バイク》のカギだった。