48話 揺れる街 part5

ハイウェイを疾走する真紅の起動車《バイク》が一台、それをまるで明りに吸い寄せられる虫のごとく灰色の起動車《バイク》が何台も連なる。
身を隠す場所を奪われ、真っ直ぐな道をひた走るしか現状打つ手がなくなりカレンとリオンは突破口を見つけようと必死だった。
「くそっ、何とかこのハイウェイから降りられないか?」
後続の追跡車に向かって威嚇の魔術を幾度となく放ってはいるが、まるで効果が見られずリオンはカレンに聞く。
「厳しいっスね……降り口からもドンドン出てくるから、しばらくは無理そうっス」
そう、先ほどから何度かこのハイウェイから降りる為の道にぶつかってはいるのだが、そこからも逆走する形で追手が出てくるので降りるに降りられないのだ。


「……しかし、なかなか振り切れないな……さっきは何度か引き離すタイミングもあったのに」
「狭い路地でシたからね、速度はともかく技量はそうでも無いってことっス」
カレンは少し自慢気に答える。
確かに今も追手の放つ魔術を、小さなミラーで一瞬確認するのみで次々躱していく。
非常に高い技術を有しているようだが、この直線ばかりの道ではその技量もなかなか活かしにくい。
それに対し、相手は数の差とこの幅の広い直線を最大限活用していた。
何台も横に広がり、二人を囲い込もうと追い立ててくる。
何とか最高速度の差で取り囲まれずに済んでいるが、こちらは運転はカレン一人。
見たところ向こうは何度か交代もしているようだった。


「しかし、今日はおかしいっスね……」
カレンは飛んでくる魔術を躱しながら呟く。
着弾した魔術が爆発しカレンの横顔を照らし出す。
「どうかしたのか?」
リオンが後ろに魔術を放ちながら聞く。
その魔術は追跡車の隙間を縫うように飛んで行った。
威嚇のため当てるつもりは無いが、一切無反応では当ててしまおうかとも考えてしまう。
「ウチら以外の車両が一切いないんス……」
だが、リオンにはその言葉の意味がよく分からなかった。
「どういうことだ?」
何せ、ハイウェイを走ったのは今日が始めて、なのでその状況がおかしいなどといったことはリオンには分からなかった。


「普段ならもっと走っているはずなんス、なのに一切の起動車《バイク》が走っていないなんてどう考えたって異常ッス」
「まぁ、国を相手取っての逃走劇だからね……」
詳しいことはリオンにも分からないため、なんとなくの返事を返すのみ
だったが前方から響いてきた音がその答えを教えてくれた。
「何スか? この音……」
それは音というより、もはや衝撃だった。
いや、実際にハイウェイは揺れていたのかもしれない。
それほどの凄まじさだった。
轟音が段々にその大きさを増し、その正体を表した。

それは、ハイウェイの道幅ほぼギリギリまでの車幅の超大型|起動車《バイク》だった。