「まだ追ってくる気か!?」
リオンが杖を構えるが、その起動車《バイク》には見知った者が乗っていた。
「おい、二人とも無事か!?」
その声の持ち主はガランの騎士団長、エアリアだった。
スーツの男を下し、ここまで二人を追って来ていたようだった。
「エアリアさん!! 無事でしたか!?」
二人は同じようなことを言い合い、顔を見合わせ思わず噴き出した。
「……ふふ」
「……はは」
笑ったのも束の間、エアリアは左腕を押さえる。
「くっ……」
美しい顔が苦痛に歪み、押さえた左腕から赤い鮮血が一筋その白い肌を伝う。
よく見れば額には脂汗がジットリと浮かんでいた。
それを見たリオンが表情を変え、すぐさま駆け寄る。
「エアリアさん、どうしたんですか!? これ……」
押さえた手をどけると、そこには痛々しい傷口が広がっていた。
この傷を抱えたままここまで起動車《バイク》を運転してきたというのか。
「……大丈夫だ、これくらいなら」
だが、その表情を見ればそれが強がりだということは、誰の目にも明らかだった。
「何を……すぐに治します!!」
言って、杖に魔力を込め治療魔術を使う。
傷口が柔らかな光に包まれ、血の流れが徐々に収まっていく。
それに合わせてエアリアの顔から苦痛の色も消えていく。
「ふぅぅ……ありがとう、随分楽になったよ」
やはり無理をしていたのか、深く息を吐いてリオンへ礼を言う。
傷口はすぐに塞がり、わずかな痕を残すのみとなった。
「無理せずに言ってくださいね、僕は回復師なんですから」
矢面に立ち続けるせいで忘れそうになるが、リオンの本来の役割は回復師なのだ。
自在術式《マルチスキル》のおかげで戦えてはいるが、ほとんどは“勇者”の見よう見まねでその動きは、お粗末なものである。
「そうだな、頼りにさせてもらうよ」
腕の具合を確かめながらエアリアは微笑み、もうすっかり調子が戻ったのか起動車《バイク》のエンジンを再びかける。
低い唸りを上げる起動車《バイク》のコンソールパネルに何かを打ち込み、リオンとカレンへと顔を向ける。
「これから元老院の一人に会う、ちょうど屋敷も近いしな」
睨みつけた先には豪奢な造りの建物がそびえていた。
「あの、ウチもついて行っていいでスか?」
それを聞いたカレンがおずおずと尋ねる。
この国のトップに会えば、商売が出来なくなった現状を改善出来ると考えてのことだった。
「あまり賛成はできないけどね」
「だが、今は仕方あるまい」
二人は顔を見合わせ、カレンの頼みに頷く。
ここで置いていったところで、命の保証は出来ない。
連れて行ってもそれは似たようなものだがそばで守れる分、置き去りにするよりは遥かにマシだった。
「絶対に、僕かエアリアさんから離れないようにね」
険しい顔でカレンに告げると、同じように険しい顔つきでコクコクと頷く。
「ふふ、後ろで言ってもあまり説得力がないな」
運転のできないリオンはカレンにしがみつく形になっているので、それをエアリアはからかうように笑う。
「う、それは言わないでください……」
バツが悪そうに頬をかきながら俯く。
情けないことだとは思うが、今は仕方がなかった。
「まぁ、ウチは役に立てるからイイっスけどね」
そう言いながら、カレンはクラッチを切り替えスピードを上げる。
元老院が待つ屋敷はもう目の前だった。
リオンが杖を構えるが、その起動車《バイク》には見知った者が乗っていた。
「おい、二人とも無事か!?」
その声の持ち主はガランの騎士団長、エアリアだった。
スーツの男を下し、ここまで二人を追って来ていたようだった。
「エアリアさん!! 無事でしたか!?」
二人は同じようなことを言い合い、顔を見合わせ思わず噴き出した。
「……ふふ」
「……はは」
笑ったのも束の間、エアリアは左腕を押さえる。
「くっ……」
美しい顔が苦痛に歪み、押さえた左腕から赤い鮮血が一筋その白い肌を伝う。
よく見れば額には脂汗がジットリと浮かんでいた。
それを見たリオンが表情を変え、すぐさま駆け寄る。
「エアリアさん、どうしたんですか!? これ……」
押さえた手をどけると、そこには痛々しい傷口が広がっていた。
この傷を抱えたままここまで起動車《バイク》を運転してきたというのか。
「……大丈夫だ、これくらいなら」
だが、その表情を見ればそれが強がりだということは、誰の目にも明らかだった。
「何を……すぐに治します!!」
言って、杖に魔力を込め治療魔術を使う。
傷口が柔らかな光に包まれ、血の流れが徐々に収まっていく。
それに合わせてエアリアの顔から苦痛の色も消えていく。
「ふぅぅ……ありがとう、随分楽になったよ」
やはり無理をしていたのか、深く息を吐いてリオンへ礼を言う。
傷口はすぐに塞がり、わずかな痕を残すのみとなった。
「無理せずに言ってくださいね、僕は回復師なんですから」
矢面に立ち続けるせいで忘れそうになるが、リオンの本来の役割は回復師なのだ。
自在術式《マルチスキル》のおかげで戦えてはいるが、ほとんどは“勇者”の見よう見まねでその動きは、お粗末なものである。
「そうだな、頼りにさせてもらうよ」
腕の具合を確かめながらエアリアは微笑み、もうすっかり調子が戻ったのか起動車《バイク》のエンジンを再びかける。
低い唸りを上げる起動車《バイク》のコンソールパネルに何かを打ち込み、リオンとカレンへと顔を向ける。
「これから元老院の一人に会う、ちょうど屋敷も近いしな」
睨みつけた先には豪奢な造りの建物がそびえていた。
「あの、ウチもついて行っていいでスか?」
それを聞いたカレンがおずおずと尋ねる。
この国のトップに会えば、商売が出来なくなった現状を改善出来ると考えてのことだった。
「あまり賛成はできないけどね」
「だが、今は仕方あるまい」
二人は顔を見合わせ、カレンの頼みに頷く。
ここで置いていったところで、命の保証は出来ない。
連れて行ってもそれは似たようなものだがそばで守れる分、置き去りにするよりは遥かにマシだった。
「絶対に、僕かエアリアさんから離れないようにね」
険しい顔でカレンに告げると、同じように険しい顔つきでコクコクと頷く。
「ふふ、後ろで言ってもあまり説得力がないな」
運転のできないリオンはカレンにしがみつく形になっているので、それをエアリアはからかうように笑う。
「う、それは言わないでください……」
バツが悪そうに頬をかきながら俯く。
情けないことだとは思うが、今は仕方がなかった。
「まぁ、ウチは役に立てるからイイっスけどね」
そう言いながら、カレンはクラッチを切り替えスピードを上げる。
元老院が待つ屋敷はもう目の前だった。