54話 屋敷での攻防 part2

「お兄さっ、うわっ!?」
上から様子を伺っていたカレンが叫ぶが、その瞬間思い切り後ろへ引っ張られ床へ尻もちをついてしまう。
「顔を出すな!!」
エアリアが強い口調で叫んだ瞬間、今までカレンの顔があったその場所へ風の魔術が凄まじい勢いで通過していった。
「ひっ……」
小さく叫ぶカレンの顔から血の気が引いていく。
あと少しでも引っ張るのが遅れていたら、今頃その首は階下に転がっていただろう。
「心配なのは分かるが、今は身を出すな!」
「す、すみまセん……」
剣をカレンの傍に突き立て防御術式を展開し、自身は徒手空拳のまま敵に備えながら階下の様子を狙われないように伺う。


だが、どう認識しているのか少しでも顔を覗かせると、その瞬間に猛烈な風がその顔を斬り裂こうと襲い来る。
これでは、リオンがどうなったかなど分かりようもなかった。
「くそっ……」
小さく吐き捨てるが、これではこの場に貼り付けられたまま動けない。
「リオン……無事でいてくれ」
エアリアには階下の相棒の無事を祈ることしか今は出来なかった。


「くっそ、動けない……」
しかし、肝心要のリオンも風の刃の猛攻から身を守るので精一杯の状況だった。
刃がその身を斬り裂くまさに刹那、自身の周囲に障壁を展開したはいいがまさか攻撃がやまないとは思わなかった。
どういうカラクリかは分からないが向こうの魔術が止まらないのだ。
後続と交代をしている訳ではなく、自分を取り囲む五人のグラサン男がずっと風の魔術を放ち続けているのだ。
別に魔術を長時間使えることがおかしいのではない。
リオンもこのぐらいの時間なら魔術を使うことは出来る、たとえ自在術式《マルチスキル》がなくとも。


では何がおかしいのか。
それは一回の魔術の持続時間だった。
いくら魔力が多くとも、攻撃術式には一回ごとの時間が通常なら存在する。
なので続けて使うなら何度か発動しなければならないのだ
個人の魔術の才に関わりなくそれは存在する。
天才と言われたマリーベートでさえも例外ではなかった。
まさか目の前の奴らがマリーベート以上の天才だと言うのか。
しかもそれが五人も。
(……ありえない)
自分の考えに首を振るリオン。
こんな明らかに使い捨ての雑兵のような連中がマリーベートより上の訳がない。
ならば何か秘密があるはずだ。
それを見極めなければならない。


(……それならっ!)
リオンは手に持つ杖を床に突き立てると、防御術式をそれに走らせ自動発動させる。
防御術式は攻撃術式と違い、時間ではなく障壁の許容量を超えるか魔力が尽きるまで発動できる。
今の状態ならまだしばらくは持つ。
(……この隙にっ!)
リオンは二本目の杖を出現させると、素早く雷の魔術をグラサン男へ向けて放つ。
「サンダーショット!!」
叫びと共に放たれた雷球はグラサン男の一人を勢いよく吹き飛ばす。

「さぁ、反撃開始だな!」