2話 冒険者登録。彼女は隠させる

「それでヤガイ。俺たちは金を稼がなきゃいけなんだが......」

「ん?依頼を受けたいのか?残念だがもう夜だからできねぇよ」

…...へ?夜?

まさかと思いながら外を見る。
外は暗く、酷くしんみりとしていた。

やっちまったぁぁぁ......!!

俺は頭を抱えながら助けを乞う。

「や、ヤガイ。このままじゃ寝る場所がねぇんだ......助けてくれ」

つっても助かるわけが......

「ったく、しょうがねぇなぁお前は。ほらよ」

そう言ってヤガイは俺の手の平に銀色のコインを落とした。

「これは?」

俺が疑問に思ったことに、ユカが仮説を立てた。

「多分お金だと思う。ありがとう!ヤガイさん!」

「どういたしまして。それは銀貨だ。それがあれば2日ぐらいは宿を取れると思うぞ」

あ、ありがてぇ!!

「それと、金が全くなさそうだし今日は俺の奢りで食っていけ」

俺とユカは目に嬉し涙を溜めた。

うるうる......!!

「「ありがとうございます!!」」

「お、おう」

そうして、最初の夜を超えることができた。

ー次の日

今日は依頼?をこなし、金を稼ぐために朝早くからギルドに来ている。
それと自分のステータスが確認できるなら、確認したい。
ギルドに入ると、すでにヤガイがいた。

「あの見た目で、結構真面目なのかもな」

そうユカに耳打ちした。

「こらっ。人を見た目で判断しちゃだめだよ!」

怒られてしまった。

「そ、そうだな」

何も言い返せな......ん?

「っておい。昨日筋肉ないよねとか言ってきた奴がいうセリフじゃなくね!?」

「あれは事実だからしょうがない」

クソッ!!今度こそ言い返せねぇ!!

「朝からいちゃいちゃとは良いご身分だこと」

ユカと話していたら、ヤガイがこちらに気づいた様だ。

「今のがいちゃいちゃに見えるのか?」

そんな俺の質問をスルーして、ヤガイが話し始めた。

「お前らまだ冒険者登録してねえだろ?早く手続きしてこいよ」

冒険者登録?会員みたいなもんか?
俺と同じことを疑問に思ったのか、ユカが質問した。

「冒険者登録ってどんなの?やった方が良いやつ?」

「やった方が良いっつうか、やらなきゃいけないからな」

それを聞いて少し予想できた。

「冒険者の証みたいなもんか?それがないと依頼を受けられないとか」

予想は的中したらしい。

「基本的にはそのとおりだ。あとは天災級の魔物や魔王の再来時の召集とかに使われる」

魔王か......強そうだな。
俺が納得しているとユカがもう一つ質問した。

「ランクは?」

確かに。それは結構重要なことだな。

「もちろんあるぞ。だが、それについては登録するときに説明されるから問題ない。ほら質問ばっかしてないでさっさと行ってこい」

ヤガイに背中を押され、俺たちは職員の人に登録をしたいと伝えた。

「ご案内いたします」

職員の人はすぐに俺たちを奥の部屋に連れて行ってくれた。

「これに手をかざしてください」

そう言って職員の人が出したのは2mほどの水晶。
俺より先にユカが手をかざした。
すると、水晶が淡く光り......中に文字が出てきた。
待てよ。俺たちこの世界の文字知らねぇ!?ってあれ?読めるわ。まぁいいか。

「あなた!?ものすごいステータスですね!?え、英雄級じゃないですか??」

「ほ、ほんとですか!?やったぁ!!」

「すげぇなユカ!!」

ユカは英雄級。よくわからないけど結構強いんだろう!!
ステータスも横に書いてある平均より4000以上だ。
これは、俺が置いてかれる感じかなぁ......

「ん?オリジナルスキル?」

「それはその人だけのスキルです!あなたの場合は......『再生』ですね。詳細は下に書いてありますよ!」

そんなものがあるのか。ユカは『再生』がオリジナルスキルか。

「え〜と、あらゆるものを再生する。どんなものでもあるべき姿に戻すことができる。強そう」

え?なにその強そうなの!?どんなものでもあるべき姿に戻すって強すぎない!?

「ユウキ!!ユウキの番だよ!!」

「お、おう」

やべぇ〜自信ねぇ〜......
そう思いながら俺も水晶に手をかざした。
とはいえ、俺も異世界転移した身!弱いわけが!!

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ステータス

Lv.1

魔力 20

筋力 60

素早さ 70

幸運 30

属性適正 火 水 氷 風 土 光 闇 聖

初期スキルポイント 100

オリジナルスキル

『下克上』
詳細 ?????
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おい。おいおいおい。嘘だろ?
平均値はこうなっている。

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ステータス 平均

Lv.1

魔力 130

筋力 90

素早さ 155

幸運 73

属性適正 2つ

初期スキルポイント 20
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どうやら......俺には属性適正やスキルポイントは高くても、基本ステータスは全部平均未満らしい。

俺は膝から崩れ落ちた。

「ふざけんなああああああああ!!」

せっかく。せっかく夢にまで見た異世界に来れたのに......あんまりだ。ちくしょうレベルで追い抜ける差じゃねぇ......

「だ、大丈夫だよユウキ!私が守るよ!!」

嗚呼......彼女を守れる彼氏になりたかった......

俺の精神が崩壊している間、職員の人はずっと水晶を見つめていた。

「どうしたんですか?そんなに俺のステータスの低さが珍しいですか......?」

俺のひねくれた言葉に、職員の人は困惑したように否定する。

「い、いえ!決してそんなことは。ただ......」

「ただ?」

「あなたのオリジナルスキル『下克上』の詳細が不明になっていて......」

よく見るとそうだ。「詳細 ???」になっている。

「今までに同じことはありますか?」

「このようなことは今までに起こっていません」

せめてスキルは強くあってくれ!!

「もしかしたら大水晶なら見れるかもしれません。ついて来てください」

職員の人には考えがある様なので、何も言わずついていく。
すると、全体が淡く光っている様な部屋に連れてこられた。その神秘的な部屋の中心にさっきの水晶の倍。約9mほどの水晶が置かれていた。

「あれに手をかざしてください。さっきの水晶とは違い、これはご自身でしかステータスが確認できません。詳細をあとで教えてください」

「わかりました」

あまりにも大きい水晶を目の前に、少し緊張しながら俺は手をかざした。

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ステータス

Lv.1

魔力 20

筋力 60

素早さ 70

幸運 30

属性適正 火 水 氷 風 土 光 闇 聖

初期スキルポイント 100
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ここまではさっきと同じ。だが......

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オリジナルスキル

『下克上』
詳細 自らが敵視、または意識した相手のステータスの数倍のステータスを自分に付与する。無意識状態でも発動。 
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まじかよ......このスキル。異常だ。
ある意味最強である。レベルや基礎ステータスは全く関係ない。相手以上の力を確実に手に入れることができる。
戸惑う俺に、ユカが声をかけた。

「ユウキ。大丈夫?」

「だ、大丈夫だ。ユカ。ちょっと良いか?」

「うん?」

俺はユカに『下克上』の詳細を話した。
話を聞いたユカは真剣な眼差しで俺に言った。

「ユウキ。そのスキル......」






『絶対に隠し通して』